BATTLE ROYALE 10




「……はぁ。」
 ため息一つ。
 私―――水鳥鏡子―――は、自室と同じ階である一階の治療室で、豊富な薬を眺めていた。
 わからないことばっかり。
 何故私はこんな治療室なんかにいるのかもわからない。
 それに、さっき。どうして彼女を殺せなかったのか。謝って逃げたりしたのか…。
 一度は殺そうと思った。
 一人殺すだけでも、自信に繋がるんじゃないかって。
 …でも、殺せなかった。
 私のせいで彼女の足に傷が出来て、赤い血を目にした瞬間―――
 私、何をしているの?って、思った。
 彼を―――あの人を殺したことは、後悔なんてしていない。あの人には、死をもって償うべき罪があった。
 でも、 彼女は、見ず知らずの他人で――
 私は彼女を殺す理由、なんて
「…理由?」
 小さく呟いて、気づいた。
 理由なんて、当然のことじゃない。
 ここから出るため。生き残るため。
 幸せに、なるため―――。
 何を躊躇っていたの?私…。
 それに、私、どうして治療室なんかにいるの?私は怪我なんてしていない。
 怪我をしているのは…彼女…。

 ガチャッ

「!」
 ドアが開く音に、私は驚いた、とともに反射的に包丁を構えた。
 ―――。
「!…」
 その女性も、驚いた様子で私を見た。
 キッと鋭い瞳で、私を睨み、金属バットを掲げる。
 吉沢、さん。
 彼女は、まさかここで私にまた会うとは思っていなかったのだろう。
 でも、私は……予想、出来たこと。
「っ!」
 刹那、彼女が立ち去ろうとしていることがわかった。
 彼女は手負いの状態。再び私と戦う気はないのかもしれない。
 でも。
「待って!」
 私は彼女を呼び止めた。
「え?」
 怪訝そうな表情で、彼女は私を見つめている。私の意図が掴みきれない様子。
 私だって、私が何を考えているのかわからない。
 でも、私―――。
 彼女を、待っていた。
「あの……手当て、しましょうか?」
 そう言った私の言葉に、きょとんとした表情を浮かべる。
 彼女はしばし沈黙した後、小さく言った。
「―――何、考えてるの?全然わからない。あたしを殺そうとしたかと思えば、謝って逃げて、こんなとこで、待ってたわけじゃ…ないわよね?」
「待って、ました。多分。……傷、負わせてしまった、から…。」
「だから、わからないって言ってるの。負わせてしまったって、故意にやったのは明白でしょ?あたしを殺そうとしてたじゃない。」
「そう、ですけど……。」
 彼女が怪訝な表情をするのは、わかる。私の行動は、あまりに支離滅裂すぎる。
 私は本来、彼女を殺さなければならない。だけど、だけど……。
 殺せない。
 私、理由のない殺人なんて…やっぱり、出来ない。
「謝ります。ごめんなさい。私、どうかしてました。殺せば、幸せになれるんだって、そう思って…でも、罪のない人を殺すなんて、私には出来ない――。」
 こんな、薄っぺらな言葉で伝わるかどうか不安だった。
 だけど、わかって欲しい。彼女にしてしまった罪を、許して欲しい。
「じゃ、とりあえず…その包丁、下ろしてもらえる?」
「え?…あ!ご、ごめんなさい!」
 彼女の言葉に、まだ包丁を握ったままその先を彼女に向けていることに気づき、慌てて包丁を下ろし、治療室の棚にそれを置いた。
「変な子。……だからって、信用するとは限らないわよ?」
 吉沢さんはふっと小さく笑い、そう言った。
 …その笑顔に、ほっと安堵する自分に気づく。
 あぁ――人の、笑顔なんて、すごく久しぶりのような気がする。
「あの…傷、どうですか?痛みますか?」
 遠慮がちに彼女を見ながら、問う。
 すると彼女は、武器をその手にしたまま、私に近づいた。
 微かに、恐怖が走る。彼女がその武器を私に振り落せば、私は、抗うこともできない。
「―――実際見れば、早いでしょ?お願い。」
 私の危惧を他所に、彼女はそう言い、治療室の丸椅子に腰をかけた。
「は、はい…!」
 私は彼女の足元に跪き、ジーンズの裂けた箇所をそっと開いた。
 細く、白いその足には、すっと横一本に深い傷が出来ていた。
 ジーンズを丁寧に膝まで捲くり上げると、膝より少し下にある傷口から零れた血が、足にべったりとついて痛々しかった。
 濡らしたガーゼで血を拭き取ると、傷だけが鮮明に見え、それはそれで痛々しい。
「こんな深い傷だと…多分、縫わなきゃいけないんですけど、ね…。」
 私が思わず重い口調で言ってしまうと、彼女は明るい声で、
「だいじょぶよ、そのくらい。そのうち塞がるって。適当に薬塗って、包帯でも巻いといてくれればいいわ。」
 と返してくれた。チラリと彼女を見上げると目が合う。その青い瞳に、不思議な感覚を抱く。
 不思議そうに揺れるその瞳を見つめていると、ふっと恥ずかしくなり、私は薬を探すべく立ち上がった。
「ねぇ、鏡子って呼んでもいい?」
 後ろ背に掛かる声に、振り向こうとして、やめた。
 彼女の目を見ると、また恥ずかしくなってしまいそうで。
「はい、いいですよ。…えっと、麗美さん、でいいですか?」
「うん。レミィでもいいけど。そっちの方が呼ばれ慣れてるし。」
「じゃあ、レミィさん、で。」
 話しながら、切り傷に効きそうな薬を見つけ、それを手に彼女の元に戻る。
 軟膏の薬を指に取り、そっと傷口に塗った。
「…いっ…つ〜…。」
 レミィさんは、痛そうに小さく眉を顰める。
「我慢して下さい!我慢すれば、すぐ治りますからね。」
 と、彼女を励ますつもりで言う。
 彼女は痛そうに眉を顰めながらも少し笑って、
「あはは、鏡子って、お母さんみたい。」
 と、言う。
「お母さん…?そう、ですか?」
「うん。我慢しなさい!とか、昔よく言われてたな〜。」
 ――お母さんみたい、か。
 嬉しいんだけど…なんだか、素直に喜べないかな。
「私、お母さんになる予定…だったんですよ。」
「え?」
 足に包帯を巻きつけながら、私は小さく言った。
「流産しちゃったんですけど、ね。――産みたかったな。」
「ふぅん。下ろしたんじゃ…ないんだ?シングルマザー志望だったの?」
「え?…あ、いえ、私結婚してたんですよ。」
「え、うっそ?」
 驚いた様子のレミィさん。無理も、ないよね。
 同級生で結婚してる子って言ったら、出来ちゃった結婚くらいしかいないもん。
「―――私が結婚してたら、やっぱり変ですよね。」
 包帯を留めて、私はレミィさんを見上げ苦笑した。
 彼女は小さく首を横に振り、
「そんなことないけど。…でも、旦那は?」
 と、不思議そうに言う。
「え?旦那、って…」
「だって、置いてきちゃったんでしょ?」
「あ…。」
 そっか、知らないんだよね。
 私があの人のこと、殺したなんて―――。
「もしかして、悪いこと聞いたかな?」
 申し訳なさそうにそう言うレミィさんに、私は微笑んで見せる。
 この人、思ってたよりも、優しい人かもしれない。
「いえ。―――あの人は、もう居ない人だから。置いてきたわけじゃ、ないんです。」
「…そっか。じゃあ、今は一人なの?」
「はい、一人です。」
 小さく頷いて答えると、
「じゃ、あたしと一緒ね。」
 と、レミィさんは寂しげに微笑んで言った――。





 ガチャリ。
 私―――中谷真苗―――は、真紋と一緒に、真紋の自室に滑り込み、扉を閉めた。
「っ、は〜〜!疲れたぁ。ようやく帰って来れたワケね。」
 扉を閉めたことで安堵感が胸いっぱいに広がる。それは真紋も一緒みたいで、私の左手も一緒に引っ張り上げながら、気持ち良さそうに伸びをする真紋。
「痛いよぅ…。」
 小さく文句を言いつつも、チラリと私を見遣る真紋と目を見合わせ、少し笑う。
 真紋の左の首筋に、一本の切り傷が見える。
 幸い深い傷ではなく、既にかさぶたになりかけている浅い切り傷。そして、真紋の武器だった拳銃。被害はそれだけで済んだ。武器がなくなったのはとても頼りないけど、でも、二人で生きてこの部屋に戻って来れたから、それだけで十分。
「ねえ真紋、シャワー浴びよっか?」
「え?…うーん、浴びたいのは山々だけど……面倒。」
 真紋は肩を竦めながら言う。確かに面倒っていうのは、わかるけど。
 片手が繋がっているということが、こんなに不便とは思わなかった。洋服も脱げないんだもん。
 だから、片手に洋服を寄せて、シャワーを浴びる。洋服が濡れちゃうのは仕方ないから、乾くまで脱いだままでいて、洋服が乾いたら着る。
 トイレだって勿論一緒に入んなきゃいけないし、もう、全ての行動が一緒なの。
 あ、ちなみに、ご飯食べる時は、私は右手が空いてるからいいんだけど真紋は左手しか空いてないでしょ。で、真紋は慣れたとか言ってるけど、スプーン使ってもいっぱい零しちゃうの。それはそれで可愛いんだけどね。だから、私が「あーん★」ってしてあげるの。最初は嫌がってたけど、さすがに諦めたみたいで、今は素直に「あーん」ってしてくれるの★超可愛いの★
「……真苗?なんかニヤニヤしてない?」
「え?ううん、気のせい。えへへ。」
 ニッコリと笑ってごまかしながら、真紋と一緒にシャワー室に入る。
 真紋のブラウスのボタンに手を掛ける。一瞬、真紋は条件反射みたいに身を引くけど、これもやっぱり諦めたらしく、私にされるがままになる。やっぱり左手だけだと不便なんだろうなぁ。
 ブラウスのボタンを外し終えると、そっとそのブラウスを脱がせる。真紋の胸って小さいの♪可愛いの♪
「あーもう、真苗、あんたなんでそんなに嬉しそうなのかなぁ?」
 真紋は、ニコニコと真紋を脱がせていく私に、照れたように言う。
「だって嬉しいもん、真紋可愛いから。」
 と素直に答えると、
「ちょっとは年上の威厳ってもんを尊重しなさいよね。」
 などと難しいことを言うのだ。私はその意味を理解しようとも思わない。結局のところ、真紋は照れてるだけなんだもん♪
 二人して四苦八苦しながら、ようやく洋服を片腕に寄せ、お互い裸になる。
 真紋はチラリと私を見て、言った。
「―――なんで、そんなに胸が大きいの?」
「え?」
 真紋らしかぬ発言にきょとんとする。
「いや…体型的には、私も真苗も殆ど差がないのに。なんで胸だけ差が出るのかな、と。前々から不思議だったんだけどね。」
 真面目くさった発言をしつつも、真紋は少し照れてるみたい。
 真紋の質問に対する答えは、すぐに浮かんだ。
「多分ね、使った回数。」
 私はにっこりと笑って言う。
 真紋はその意味を考えるように沈黙して、突然かぁっと赤くなった。
「な、な……何言ってんのよ!?」
 思わず声が裏返る真紋が可愛い★
「多分そうよ。だって私も十五、六までは小っちゃかったもん。やっぱり使うと大きくなるわけよ★」
 にやにやと真紋の反応を楽しみながら言う。
 真紋は赤い顔のまま、シャワーのコックをひねった。
 サァァと降る温かいお湯の雨に身体を打たれ、心地よさに浸る。
「…、―――。」
「ん?」
 水音の向こうで、真紋が小さく何か言う。だけど、激しい水音にそれは掻き消される。
 きょとんと真紋を見つめていると、
「――真苗。」
 と、雨の向こうで私を見つめ、名前を呼ぶ真紋。
「なぁに?」
 少し真面目な顔をした真紋を不思議に思いながら聞き返す。
 真紋は、手錠の掛かった右手で、私の左手の手首を握った。
「――私、軽い女って嫌いよ。」
「……。」
 ポツリと言った真紋の言葉に、胸の奥が、チクッと痛む。
 今更って感じだけど…今までも散々軽い女だって言ってきたし、真紋もずっと呆れ顔だったけど…改めて言われると、やっぱりちょっと、ショックかな。
 でも…真紋はこう続けた。
「今までは、別にどうでも良かったのよ。…軽い女なんて、どうせ自分が損するだけでしょって思ってた。でも…なんか、あんたと一緒に居ると、考え方変わってきたかも。」
「…え、っと…どういう意味?」
 真紋が大事なことを言ってるのはわかるのに、その意味がわかんなかった。
 頭悪い自分が、ちょっぴり悔しかった。
 真紋は黙って私を見つめ、そして――
「…」
 黙って、キスをくれた。
 え…?なんで……?
 真紋はゆっくり顔を離し、俯いた。
 お湯に濡れる髪が真紋の頬にピタリとくっつく。
「っ…!」
 突然、真紋は左手でその唇をごしごしと拭った。
 今のキスを、なかったことにするみたいに――。
 そして、少し不機嫌そうな顔で、私に言った。
「私は、浮気する女とか、誰とでも寝る女とか、そういうの大嫌い!
 ―――なんで、一人だけを愛したり、出来ないのよ?」
 なんで、怒るのかな……?
 なんで?
「――なんで…って…。そんなの真紋に関係ないじゃない!なんで、なんでそんなこと言うの?」
 私もなんだか不機嫌になってきて、頬を膨らませて言った。
「え?なんでって…―――。……う、うるさい!」
「な、なによそれ…。」
「………なんでも、ない…。」
 ―――…?
 変な、真紋。
 真紋の態度、なんか変だし…いつも違って、言ってることめちゃくちゃだし。
 私が理解できないのがいけないのかなぁ?
 でも、真紋がキスしてくれたの初めて。
 嬉しかったよ、真紋。





 すっきりした頭で目が覚めた。
 随分眠っていたのか―――記憶が曖昧だ。
 酷い熱にうなされていたが、手を額に遣ると、多少微熱は残るものの熱はかなり引いていた。
 あたし―――夕場律子―――は、ゆっくりと首を動かして、壁に掛けられた時計を見上げた。
 六時、か。
 …六時?
 朝なのか、夕方なのか、それすらもわからない。
「―――由子?」
 小さく名を呼ぶ。
 部屋は静寂に包まれている。
 トイレ?シャワー?―――それとも、まだ帰ってきて…いない?
 微かに走る恐怖に、小さく身震いする。
 朦朧とする意識の中、出て行く由子を必死で止めようとした記憶がある。
 けれど、あたしの思いは伝わることなく、パタン、と…ドアは閉じた。
 すぐにまた痛みに襲われ、あたしはそのまま深い眠りに落ちた。
 今が、六時。
 由子が出て行ったのは、一体何時だったのだろう。それがわからない今、この部屋に由子の姿がないことが自然なことなのか、不自然なことなのか…それすらもわからない。
 身体を起こす。頭がぼんやりするが、腕の痛みも引き、随分調子が良くなった。これなら起き上がっても問題ないだろう。
 身体の調子を探るようにそっと身体を動かし、ベッドから降りた。
「…由子?いないの…?」
 シャワー室とトイレを覗く。しかし、そこに由子の姿はなかった。
 やっぱり、帰ってきて、ないんだ――。
 せめて、あの時由子が出て行った時間がわかれば…。
 ―――。
 …!?
「…え…?」
 不意に思い当たった記憶に、あたしは確認するように時計を見上げた。
 六時。
 窓辺から、外を見遣る。人気が少なく、太陽が暖かい。
 …朝の、六時。
 思い当たった記憶に、あたしは不安を隠せなかった。
 あの時、確か由子に肩を借り、移動したんだ。禁止エリアになった、から――。
 移動してすぐに、由子はこの部屋を出て行った。
 禁止エリアは十一時に放送が流れる。
 つまり――少なくとも六時間以上は、由子は帰ってきていないってこと…?
「うそでしょ…。」
 ポツリと呟いて、あたしはベッドに座り込んだ。
 落ち着かず、何かないかと思い部屋を見渡した。
 そして目についたのは、作り付けの机に置かれた、ノートパソコン。
 あたしはそのパソコンに近づき、電源を入れた。
 確か、由子がこのパソコンに、死亡者のデータが送られてきていると言っていた。
 死亡者?
 そんな、バカな。
 由子が、死ぬなんて、そんなこと。
 不安を振り払うように鼻で笑い、受信しているメールを開いた。

『送信者:  管理人
 日時:   11月10日 00:00
 宛先:   13−A
 件名:   死亡者 二名

 本文:

 加山了一 死亡
 榎本由子 死亡

 残り18名。』

 ――――!!
 我が目を疑った。
 何度も何度も、その名前を目で辿る。
 エノモトユウコ。
 榎本由子。
 死亡……!!?
 嘘、でしょ?
 嘘よね?
 ―――嘘、に…決まってる…!!
「由子…!!!」
 信じられない。
 信じたくない。
 あたしの傍にいてくれるって言ったよね?
 ねぇ由子!
 あたしのために、心配そうな顔してくれたわよね?
 あたしの、あたしのために―――。
「…!」
 あたしの、ために?
 由子はあたしのために薬を探しに行って、そして……
 殺され、た、の…?

 ふっと身体が重くなって、あたしは椅子に座り込んだまま虚空を見つめた。
 藍子を抱きしめたぬくもりも。
 由子がおでこに触れてくれた手の感触も。
 もう、過去に消えた。
 あぁ、あたし、本当はあの子達が居たから…
 だから、もうちょっと生きてみようって思えたんだ。
 あたしはあの子たちに、希望を見た。
 なのに。
 それ、なのに―――!!
「うっ、……うあぁぁぁっっ…!!!」
 声を上げて、泣いた。
 不安を掻き消すように。
 何もしないより、泣いてる方が楽だから。
 もう、身体だけになってしまいたい。
 あたし、これ以上生きていて、何の意味があるの?
 また希望を見つけ、それを失い、泣くの?
 もういや。
 生きていることが、残酷すぎるよ。
「ひっ、…う……。」
 涙を拭う手が、見えた。
 手首に刻まれた幾重もの傷跡。
 あぁ、そうか。
 あたし―――死ねなかったんだよね。
 自らの命を絶つことすら出来ない弱虫。
 ねぇ、どうすればいいの?
 由子、藍子…
 答えてよ…!!!





「…もうクタクタ。」
 ぼんやりと天井を眺めながら、私―――叶涼華―――はポツリと言った。
 昨日からずっと、セックスしかしていない。
 睡眠欲も、食欲も、全部どこかに行ってしまったみたい。
「あたしも、よ。」
 ベッドの隣にうつ伏せる光子が、くぐもった声で言う。
 私の―――恋人。
 露になった肩先に、触れる。
「……ねぇ、少し休みましょ?本当にクタクタなの…。」
 光子は小さく顔を上げ、疲れた表情で言った。
 そんな表情をされると、もっと、もっと……したくなる。
「――ン、…や、だ…。……お願い、休ませてよ…。」
 私が強引に彼女を組み敷くと、懇願するように言う。
「イヤ。 どうして?私の言うことが聞けないの?」
 光子の身体を撫でながら、そう問う。光子と一瞬目が合うが、彼女はすぐに私から目線を逸らした。
「疲れちゃったの……もぉ、やだぁ…。」
 光子は涙目になりながら言う。
 あぁ、この表情…ゾクゾクする。
「上司命令。私がいないと何も出来ないくせに。生意気言わないで。」
 たしなめるように言い、強引に彼女の閉じられた両足を割り開く。
「…ぁ…ン……、ねぇ…涼華…、なんかっ、違……ぁ…!」
「感じてるくせに。私に口答えしないで。」
「…っ!」
 ―――、
 ドンッ!
「…くっ…!」
 突然、光子が私の身体を突き飛ばした。
 その衝撃で私はベッドから転げ落ち、怪我した頭部を強く打った。
 鈍く走る痛みに、私は顔を顰めた。
「何、するの!」
 キッと光子を睨んで言う。
 少し厳しく言えば、謝ってくれるかなって思った。
 けれど―――
「いい加減にして!!あたしはもう、涼華の部下なんかじゃないのよ!!今の涼華は、あたしの好きだった涼華じゃない!ねぇ、どうしちゃったのよ!!?」
 と。光子は悲しげな瞳で、私にそう怒鳴りつけた。
 あたしの好き、な?
 私は何も変わっていない。
 むしろ、これが本当の私――。
 これ、が…?
 少し前までは、すごくウブで、恥ずかしがりやな叶涼華だったかも、しれない。
 でも、今の私は――。
『征服したい。』
 私の物に。
 光子は私の物。
 私の命令は絶対。
「―――こんな私にさせたのは、光子よ。」
 私は彼女を見据え、言った。
「私が光子のこと、守ってあげる。だから私に従いなさい。あなたが空軍で順調に任務が遂行できていたのだって、私のフォローがあったからでしょ?私がいなくちゃ、何も出来ないのよ。そうでしょ?」
 私は薄い笑みを浮かべ、言う。
 私は本心を言ってるだけ。
 こんな、ダメな人間をここまで育てたのは―――
「バカにしないで。」
 チャッ。
「…。」
 彼女の行動に、私は絶句した。
 素早い動きで彼女の手が動き、次の瞬間その手の中には―――拳銃があった。
「涼華がシャワーを浴びてる隙に、マクラの下に隠しておいたの。…万が一のために、ね。」
 彼女はベッドの上から冷たく私を見下ろし、銃口を私に向けていた。
「…どういう、こと?」
 私は小さく言う。
 光子、どうかしてる。
 私達は平和という統治をもたらすために降り立ったんでしょう?
 なのに、何故あなたが…私に銃を向けるの?
「怖いのよ。…いつ、涼華に殺されるのか。」
「?……私が、光子を殺す?そんなバカなこと、あるわけないじゃない。」
 彼女の狂言に、私は笑った。
 光子、頭がおかしくなっちゃったのかな。
「確かに涼華は、平和を好む人間ね。でも、それは名目上でしょ?本当は、平和という仮面を被った支配をしようとしてる。涼華が私の身体を壊すことはないでしょうね。でも……あなたに洗脳されることは、私の精神が殺されるのと同じことだわ。」
「何言ってるの?私は人々が幸せであることを望んでいるだけ。私に従えば、みんな幸せになれるの。光子も、素直に私に従えば―――」
「もう戯言は要らないわ。お願い、私の目の前から消えて。私がこの引き金を引く前に。」
 どうかしてる。
 どうかしてる。
 私を殺すなんて。
 私の右腕だと思っていたのに。
 裏切るなんて。ひどい。
「……私は光子を愛してるのよ。」
 私は立ち上がり、光子に近づいた。
「私だって愛していたわ!……でも、涼華は変わってしまった。変わって―――」
 光子は言葉を切り、涙を流した。
 涙。
 どうして泣くの?
「ねぇ光子?」
「…っ…。」
「―――今でも、愛してるんでしょ?」
 私はベッドの光子に、少しずつ近づいていった。
 彼女は銃を私に向けたまま、少しずつ後ろに下がっていく。怯えるように。
 ――きっと光子は、私を殺すことなんて出来ない。

 ドサッ。

 私は光子をベッドに押し倒す。
 彼女の手にあった銃は、彼女の手から落ち、ベッドに転がった。
 私はそれを拾い、部屋の隅に投げ捨てた。
「愛しているわ、…光子。」
「…ぅ、…うっ…。」
 涙で濡れたその頬を撫で、無抵抗な彼女へ、くちづけを落とした。





「効果は上々ですわ。面白いものを提供して頂いて、感謝します。―――ええ、その通りです。」
 私―――闇村真里―――は、業者の社長と携帯で話しながら、動向をディスプレイで見守っていた。
「――ええ、正義感の強い女の子に埋め込んでみたのですけど、性格が豹変してしまいましたわ。素晴らしいデータが残せそうです。」
 空軍出身のわりには、小柄な体格もあり戦闘力は中の下。
 頭はそこそこ切れるようだけど、人を殺す気が一切ないというのは困り物。
 彼女を実験台にしたのは、成功だったみたいね。
「―――いえ、お礼を言うのはこちらの方です。…それでは、失礼致します。貴社のご盛栄の程、祈願致しますわ。」
 携帯を切って、一人微笑む。
 征服欲を司る神経中枢に直接的に訴えかける――詳しいことは略すが、その、性格をも変えてしまう面白い機械をある伝手から入手した。今回のプロジェクトで、その機械(マイクロチップのようなもので、人体の身体に手術によって埋め込んで使用する)を一人の参加者に使用した。
 誰よりも正義感が強く、反面、ウブで晩生な女の子。
 ―――叶涼華。
 元の彼女は、征服欲など殆ど無い、純粋で可愛らしい性格だった。
 しかし、例の機械を埋め込んだだけでこの豹変の仕方。ここまでの成果が上がるとは、正直な所、予想以上である。
 因みに、この機械を埋め込んだのは、前回のフィールドに催眠ガスを撒き、この施設に移動させた時。参加者全員に感情抽出のマイクロチップを埋め込んだ際、彼女だけ共にこの機械を埋め込んだのだ。
 叶涼華と長い付き合いらしい鴻上光子の戸惑いが、また見ものだ。彼女や本人は、二人が恋愛関係を結んだことが原因で豹変したと思っているみたいだけれど。それはそれで都合が良いわ。
 さぁ、叶涼華が鴻上光子を屈服させていく過程。しっかりデータに残させて頂くわよ。





『禁止エリアを告知します。
 2−A、2−B、4−B、8−A、8−C、10−C、12−A、12−B、12−C。
 以上の9エリアです。午後0時から十一時間が、禁止時間となります。繰り返します…』
 ―――ヒュッ。
 私―――渋谷紗悠里―――は、チラリと時計を見上げ、小さく息を吐いた。
 この部屋、禁止エリアになったのね。だから何、という感じだけど。
「…来て。」
 小さく呟いて、私はそれを呼んだ。答えるように、ひゅぅ――と、私の手に絡んで消える。
 それは、風。
 私ね、思い違いをしていたみたい。私の力。まだ、消えたわけじゃない。
 唯、この人工的な建物の中では、とても力が弱まっている。
 その理由もわかった。ここは人工的な場所。つまり…私の力の源が、少ない。
 そして見つけた。私の力を存分に発揮できる場所。
 それは、人工庭園。
 まだ行ったことはないけど、きっと植物が生えているだろうし、土もあると思う。
 私の味方。…それは、自然の力。
 この狭い部屋にも、風は微かに存在している。私はそれを操ることが出来る。
 私は今までずっと、考えたことがなかった。ううん、これは自分の力だと信じていた。
 でも違った。私は唯、他の人よりも自然と通じることが得意なだけなんだって。
「―――フッ…。」
 小さく、笑みを零す。
 自分の限界も、そして自分がどこまで出来るのかもある程度予想出来る。
 ようやくこの力の正体が見えた。自分がわかる。自分の力が。それはとても力になる。
 攻め時も、引き時も見極めることが出来る。
 そして―――私は、この力を操れる分、人より強い!
 ひゅぅ。
 風が、私の髪を撫でていった。
「ありがとう。」
 私の味方はあなたたちだけ。
 でも、あなたたちは―――どんな人間よりも、頼りになる味方。





「…2−A、B。」
「―――はい。」
 神妙な面持ちで、櫪が頷く。
 そう。私―――不知火琴音―――の聞き間違いではないのね。
 この部屋を出なければならない。
 遂に、時は来た。
「お嬢様。どう致しますか。この階には備品室と自由室がありますが、どちらも鍵はかかりません。―――どこも危険には変わりません。」
「そうね…。」
 私はいつものように、窓際の椅子に腰掛けてぼんやりと外を眺めていた。
 そんなことは、今はどうでもいい―――。
 ふと櫪を見遣ると、真剣に答えを待っているみたいで、少し笑った。
 本当に真面目ね。
「人工庭園なんてどう?」
「人工庭園…ですか?六階にある広いスペース。お嬢様がお望みならば構いません。」
「そう。じゃあ、決まり。」
 私は微笑んで頷くと、再び窓の外を見遣った。
 あぁ、なんて平和な風景。
 私はこの窓からこの風景を眺めることで、その平和な世界に居る気になりたかったのかもしれないわね。だけど今は、もうそんな猶予がないこと、わかっている。
 今から一時間後。私と櫪の命は危険に晒される。
 その前に、櫪には言っておかなくてはならない。
 とても、大事なことを――。
「あの、お嬢様。」
 私の決意が固まろうとしていた時、黙っていた櫪が不意に口を開いた。
 少し拍子抜けしながらも、
「なぁに?」
 と尋ねる。笑顔で振り向いたが、そこにある櫪の表情はいつもに増して真剣だった。
「―――今、話さなければ…後がないような気がします。ですから…。驚かれるかもしれませんが、どうかお聞き下さい。」
「…ええ。」
 私が頷くと、櫪は躊躇いがちに一瞬目を伏せたが、すぐに私を見据え、言葉を続けた。
「私はお嬢様に忠誠を誓った身。…それなのに、私はお嬢様を―――」
「私、を…?」
「…愛しています。」
 ―――。
 わかって、いる。
 わかっているわ、櫪。
 貴女が私を愛してくれていること。気づいてた。
 だって貴女は―――ずっと、私しか見ていなかったものね。
「…ご迷惑だとわかっています。ですが、…死ぬ前に、どうか、伝えたいと―――」
 私はそんな櫪の言葉を遮るように、そっとその唇に触れ、その口を閉ざした。
 櫪は不思議そうに瞳を揺らしたが、言葉にはしなかった。
「――今の言葉、聞かなかったことにさせて。いいわね、今はまだ。」
「…お嬢、様…。」
 櫪は、悲しげな表情を見せた。
 そんな顔しないで。
 今は、――今はそれよりも、真実を話さなければいけないの。
 貴女の気持ちが変わってしまうかもしれないような、真実を。
「櫪。今から私が話すことを、よく聞きなさい。驚くと思うけれど…私が話すことは、全て真実だから。」
「…はい。」
 そう切り出したものの、頭の中で言葉がまとまらない。
 時計は十一時十五分を指している。時間が、ない。
 私は立ち上がると、櫪と同じ目線で、櫪のその目を真っ直ぐに見つめた。
 透き通った黒い目。私は櫪のこの目が、いつも羨ましかった。
「貴女の両親の事を私は知っていると、話したわね。……貴女はそれを知らなくてもいいと言った。だけど、私は伝えなくてはいけないの。…どうしても。」
 そう言った私の言葉に、櫪は不思議そうに私を見つめる。
 ずっと隠していた。
 本当ならば、知っていて当然の事を、ずっとずっと隠し続けてきた。
「不知火家には、色んな伝説があるわよね。しかも、こうなればこんな災いがある、っていう嫌な伝説ばっかり。私はそれが嫌いだった。そんなもの嘘だと思っていたの。…だけどね、嘘じゃなかった。全ては真実だった。実際、不知火の呪いによって過去に村が一つ消えたという文献も残っているの。」
「…呪いに、よって…?」
 櫪は、小さく眉を顰めた。櫪は不知火家の伝説を信じていないことは知っていた。
「あのね。不知火の伝説にこんなものがあるの。後継者の娘が…二人目の娘が、片目がない状態で生まれてきた時、災いが齎される、と。」
「二人目の?…はい。」
 次女など居ないではないか、そんな表情をしながら、櫪は頷いた。
「―――でも、生まれてきたのよ。私の妹が、片目がない状態でね。」
「…は…?」
 きょとんと、驚いた様子で私を見つめるその瞳。
 チクリと胸が痛むが、私はそれを振り払い、言葉を続けた。
「そしてその子は―――なかったことに、されたの。」
「どういうことです?…お嬢様に、妹が…?なかったこと、とは?」
 混乱しているような櫪の様子に、少し笑った。
 でも、同時になんだか悲しくもあった。
「私の妹はね。生まれてすぐに、私の目を―――移植されたわ。」
「…!?」
 櫪が小さく目を見開く。
「つ、つまり……お嬢様は、生まれた時は両目とも…。」
 櫪の言葉に頷き、それに続けた。
「私の両目はあったのよ。生まれた時は。…私がこの目を失ったのは先天的にでも事故でもなく…故意に、なの。」
 そう言って、普段は前髪で隠している左目に――眼球の無い目に、触れた。
 既に、櫪を散々驚かせている。
 だけど、―――驚くのは今から、なのよ。
「その妹は、片目がないということを、移植によって“なかったこと”にされた。そして、不知火家の次女であることも、“なかったこと”にされたの。」
 ようやく事態を理解してきた様子の櫪は、小さく息をつき、
「…お嬢様の妹は…捨てられたのですか?」
 と、呟くように言う。
 私はその言葉に、首を左右に振った。
「いいえ。“なかったこと”にしても、それは元々“あったこと”でしょう。だから両親は心配した。そして、その妹を近くに置いておくことにしたの。不知火家の人間ではなく―――仕えるものとして。」
 私が言葉を言い切ってから数秒、櫪は固まったまま動かなかった。
 そして、
「……え!?」
 小さく目を見開き、説明を乞うように、私をじっと見つめる。
 そんな櫪の姿に、これ以上焦らすのは酷だと思った。
 私は小さく息をして、そして、言った。
「つまり、“次女”ではなく、長女の“侍女”として手元に置いた。―――星歌、貴女のことよ。」
 私は、櫪の…いや、不知火星歌のその瞳を真っ直ぐに見つめ、言った。
 星歌は信じられない、といった様子で私を見つめていたが、やがて静かに目線を落とし、小さく首を横に振った。
「そんな、バカな…。」
 ポツリと零す。
 痛い程に伝わってくる、星歌の苦悩。
「私が…お嬢様の妹だと言うのですか…?私の両親は、旦那様と奥様で…。…私のこの目は、お嬢様の物、だった…?」
「信じられないでしょう。でもこれが真実なのよ…星歌…。」
 私はなだめるように言って、そっと星歌を抱き寄せようとした。
 しかし―――
「ッ…!」
 パシン、と。星歌の手が、私の手を弾いた。
 星歌が私に抗ったのはこれが初めてで、驚いた。
 しかし次の瞬間、私は更に驚いた。
「…ッ……!!」
 櫪のその瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちていた。
 櫪の涙。それを目にしたのは――初めての、ことだった。
「どうして…どうして私を欺いたのです!?…私は、…私はずっと、ずっと、貴女の侍女として生きてきたのです。それなのに…突然、妹だなんて―――貴女が私の姉だなんて!そんなこと…!」
 星歌の鋭い瞳が、今、私を睨んでいる。
 その黒い瞳が。二十二年前まで、私のこの左目に埋まっていたはずの黒い瞳が。
 私を―――憎んでいる。
 こんな反応をするだなんて、思っていなかった。
 混乱することも戸惑うことも予想できていた。
 けれど―――星歌のことだから、納得してくれるとばかり思っていた。
「知らない方が良かった。そんなこと知らずに、貴女の侍女として死んで行きたかった!私は貴女の妹ではなく―――」
 パシン。
 弱く、星歌の頬を叩いた。
 星歌の言い分はもっともかもしれない。
 だけど―――
「だけどね、星歌。貴女は私の妹なのよ。……我が侭言うのは止めなさい!」
 姉として。
 不知火家の長女として。そして次女に対して。妹に対して。
 私は、叱咤した。
 星歌は驚いた様に私を見つめていたが、まだその瞳から涙を零し、
「我が侭なのは、お嬢様の方です!いつも身勝手で、私の気持ちなど考えてくれたことなどありますか!?―――私は、私はいつも我慢して、我慢、して――!」
 星歌からそう怒鳴られた時、ふっと。
 何故だろう、心が温かくなるのを感じた。
 我慢、して――?
「なら…そう言えばいいじゃない…。バカね。私が貴女の苦しみを願うわけがないでしょう。私はいつも、星歌の幸せを祈っていたわ。」
「……ッ、…そんな、こと…。」
 まだ何か反論しようとする星歌を、私は抱きしめた。
 今度は、抗うことはしなかった。
「そんなこと、侍女が言えるわけ…ないわよね。…ごめんね、星歌。……ごめんね…。」
「……ぅ…、…ッ…。」
 星歌は、小さく嗚咽を漏らした。
 泣くことに慣れていないように、不器用に、星歌は泣いた。
「星歌が侍女だとか妹だとか、…私にとってはどうでもいいわ。」
「…え…?」
「……愛しているの。星歌という一人の女性を、狂おしい程に愛してしまったの。……妹なのに、それなのに…こんな気持ちを抱くのは、おかしい?」
「お嬢、様…。」
 星歌は、囁くように私の名を呼んだ。
 …名を?
「お嬢様なんて、もう呼ばないで。琴音でいいわ。」
「琴音、様。」
「…様もいらないけど。」
「……琴音……様。」
 どうしても呼び捨てできない、そんな星歌に、私は笑った。
 星歌も私を見て、ふっと笑みを零した。
 そして星歌は私の髪をそっと撫で、不器用に、ほんの一瞬のキスをくれた。
 だけどそのキスは、今までで最高のキス。
 私は琴音。星歌は星歌。
 お嬢様でも、侍女でも、長女でも、次女でもない。姉妹とか、そんなことはどうでもいい。
 唯二人、愛し合えるのならば。
 星歌が全てを知った時、初めて。
 私は私で、星歌を愛することが出来る―――。










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