第1.5話




 一先ず、経過は順調と言えるだろう。
 現在届いている登録申請メール。何れも、その内容に不備は無い。
 内、数名をリストアップする。
 札幌、千葉… 在住地も様々。
 IPアドレスから取得する個人情報。
 所謂ハッキングというやつだけれど。
 そこから得た情報を元に、lily gardenの住人をピックアップしていく。
 登録されている個人情報から取得できるのは、年齢や職業と言ったプロフィール。
 人物の性格を特定する要素としては、普段どのようなサイトに出入りしているのか。
 他にも要素を増やすことも可能だけれど、まずは少ない情報でスタートしてみるのも面白い。
 ――その時、新着メールを示す表示がパソコン画面の端に現れた。
 『登録申請』。
 また一名、我が庭園への入場を望む者から送られてきた情報。
 “私”は軽く口の端を歪め、そのメールを開いた。
 あまりにも慣れすぎたその作業。その送信者の情報を検索する。
 そして…――

「鈴田…咲名…?」

 表示されたその情報に、私は思わずポツリと零していた。
 一瞬、同姓同名かとも思った。
 ―――…否!
 間違いない。
 あの、鈴田咲名だ。カナリア。
 まさか芸能人まで、私の庭の門を叩くなんて。
 驚きと共に、歓喜が湧き上がる。彼女が芸能人だからだとか、そんな理由ではなく。
 ようやく、信頼に値しそうな女性に出逢えたことに対して。
「ようこそ…lily gardenへ。」
 私は小さく呟いて、笑みを浮かべる。
 スキャンダルも無ければ、これと言った噂も聞かない。
 仕事一筋の彼女が求めているものとは。

 ―――堕ちて、みなさい。









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