一先ず、経過は順調と言えるだろう。 現在届いている登録申請メール。何れも、その内容に不備は無い。 内、数名をリストアップする。 札幌、千葉… 在住地も様々。 IPアドレスから取得する個人情報。 所謂ハッキングというやつだけれど。 そこから得た情報を元に、lily gardenの住人をピックアップしていく。 登録されている個人情報から取得できるのは、年齢や職業と言ったプロフィール。 人物の性格を特定する要素としては、普段どのようなサイトに出入りしているのか。 他にも要素を増やすことも可能だけれど、まずは少ない情報でスタートしてみるのも面白い。 ――その時、新着メールを示す表示がパソコン画面の端に現れた。 『登録申請』。 また一名、我が庭園への入場を望む者から送られてきた情報。 “私”は軽く口の端を歪め、そのメールを開いた。 あまりにも慣れすぎたその作業。その送信者の情報を検索する。 そして…―― 「鈴田…咲名…?」 表示されたその情報に、私は思わずポツリと零していた。 一瞬、同姓同名かとも思った。 ―――…否! 間違いない。 あの、鈴田咲名だ。カナリア。 まさか芸能人まで、私の庭の門を叩くなんて。 驚きと共に、歓喜が湧き上がる。彼女が芸能人だからだとか、そんな理由ではなく。 ようやく、信頼に値しそうな女性に出逢えたことに対して。 「ようこそ…lily gardenへ。」 私は小さく呟いて、笑みを浮かべる。 スキャンダルも無ければ、これと言った噂も聞かない。 仕事一筋の彼女が求めているものとは。 ―――堕ちて、みなさい。 |